コラム

イノベーションとは(1)『フランチャイズ・イノベーション』より

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フランチャイズ・イノベーション

フランチャイズチェーンの中には、社会にイノベーションをもたらしたものも少なからず存在します。新しい市場を切り拓いたチェーン、日本の商習慣や生活習慣を変えたチェーンもあります。私たちは、フランチャイズチェーンによるイノベーションを「フランチャイズ・イノベーション」と命名し、フランチャイズという仕組みがどのようにイノベーションに貢献したのか研究しました。その成果をまとめたものが小冊子『フランチャイズ・イノベーション』です。
本コラムは、この冊子より抜粋掲載しています。

なぜイノベーションが必要なのか

昨今、企業経営が語られる際に「イノベーション」という言葉が使われることが多くあります。Apple社のiPhoneがイノベーションの見本だ、最近の日本企業はイノベーションを起こせていないから国際競争力が低下している等言われています。イノベーションとは、英単語として訳せば「革新」ですが、「新しい価値を創り出し、顧客へと訴求すること」と解せばわかりやすいと思います。つまり、「市場にない新しい製品やサービスを開発して世に出すこと」がイノベーションであることは当然ですが、研究開発から生産や販売に関わるプロセスやビジネスモデル、技術などもイノベーションに該当するものと考えられます。つまり、企業価値を構成するあらゆる要素にイノベーションの可能性は潜んでいるのです。

ところで、なぜイノベーションは必要なのでしょうか。企業はゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)でないとなりません。企業活動が継続しなければ、あらゆる経営資源が集まりません。資金調達もできませんし、人材採用もできません。潰れてしまうとわかっている企業と取引をしたがる相手もいないでしょう。そもそもイノベーティブでなければ、新規に事業を興し、成功させることも困難です。

持続的イノベーションと破壊的イノベーション

イノベーション論で著名であるハーバード・ビジネス・スクールのクリステンセン教授によると、「既存事業は持続的イノベーションをほぼ必ずマスターするが、破壊的イノベーションには対処できないことが多い」。
持続的イノベーションとは既存製品を改良することで顧客に価値を提供することであり、破壊的イノベーションとはこれまで既存製品を使っていなかった層(無消費者)へ新しい価値を提供することで代替製品を受け入れてもらうことです。破壊的イノベーションに対処できない事象は、企業活動として当たり前のことだけをしているがために起こります。既存企業は顧客の声を聞きながら、日々頭の下がるような努力をして改善に次ぐ改善を行い、製品をリニューアルして世に出します。顧客に継続的に支持され、陳腐化しないためには当然の行為です。それだけ「持続的に」製品をリニューアルするには、組織を維持するためにも、今後のリニューアルのための研究開発費を稼ぐためにも適切な価格設定にする必要があります。さらに、不況時に培われた「集中と選択」によって経営資源も分配されていることでしょう。

価格(コスト)と顧客が求める性能の関係

ここで、価格(コスト)と顧客が求める性能の関係を考えてみましょう。所得が低い、もしくは所得があっても必要最低限の機能しか求めない顧客層(以下、「ローエンドカスタマー」といいます)は、市場に出回る製品の性能が求める以上に向上すると積極的には「買い替え」をしなくなります。壊れてしまった、などで買い替えないとならないときは中古品や廉価品をまず求めることも多いでしょう。この場合、価格は性能の向上に合せて相応に値上げされるか、または維持となる前提です。
次に考えるべきは主流派となるであろう、中間層の方々です(以下、「ミドルエンドカスタマー」といいます)。ミドルエンドカスタマーはローエンドカスタマーよりも所得がある、もしくは性能の向上にお金を出しても良いと考えている方々です。求める性能には一定のラインがあります。支出可能な範囲のなかで、製品リニューアルによる性能向上に伴う価格の上昇にも対応します。ところが価格が支出可能な範囲外になる、または支出可能な範囲であってもすでに求める性能が一定のラインに達していて、性能向上の価値が価格の上昇を下回ると判断した場合、積極的な買い替えが控えられ、ローエンドカスタマー同様に中古品や廉価品を求めるようになります。つまり、皮肉なことに企業が顧客の声を聞き、改善を進めるほど、製品についてのニーズに声をあげてくれる顧客数が少なくなることになります。

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