コラム

成長ステージのフランチャイズと成熟ステージのフランチャイズ『フランチャイズ・イノベーション』より

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フランチャイズ・イノベーション

フランチャイズチェーンの中には、社会にイノベーションをもたらしたものも少なからず存在します。新しい市場を切り拓いたチェーン、日本の商習慣や生活習慣を変えたチェーンもあります。私たちは、フランチャイズチェーンによるイノベーションを「フランチャイズ・イノベーション」と命名し、フランチャイズという仕組みがどのようにイノベーションに貢献したのか研究しました。その成果をまとめたものが小冊子『フランチャイズ・イノベーション』です。
本コラムは、この冊子より抜粋掲載しています。

フランチャイズビジネスにおける成長期から成熟期への変化

フランチャイズチェーンはレギュラーチェーンに比較して成長期に効果的な多店舗展開手法です。魅力的なビジネスモデルを構築した本部と一緒にビジネスをしたい、という加盟者の他人資本を活用して社会への露出を増やし、積極展開をしていきたいタイミングで多店舗展開を実現できるからです。
ところが、右肩上がりの成長期が過ぎ、社会的にも認知されてブランドにもそれなりの価値がついてくる安定期や成熟期に入ると状況が変わってくることがあります。その主な理由としては以下の3つがあげられます。
①競合の出現(模倣)
②加盟店から提供するサービス品質のバラツキ
③後継者問題をはじめとした「ヒト」の問題

①競合の出現(模倣)

製品や技術であれば、模倣による競合の出現を抑えるために特許を取るという方法があります。ところが、特にフランチャイズのサービス業では模倣困難なビジネスモデルをつくるのは非常に困難です。フランチャイズビジネスは加盟者が独立した店舗を開設し運営します。ビジネスモデルが優れており、比較的短時間の研修で身に付けられるものでなければなりませんし、サービス業は他の業種業態に比べると投資額も少ないため参入障壁が高くはないことがあります。「ビジネスモデル特許」という言葉がひと頃もてはやされましたが、これはそのビジネスモデルを成立させるために発明したコンピュータシステムに対して与えられるものですので、ビジネスモデルそのものに与えられるわけではありません。

ビジネスモデルを守るためは市場に打って出ると同時にフランチャイズで多店舗展開を行い、第一人者としてブランド認知を高める戦略をとることはある意味当然のこと、とも言えるでしょう。参入障壁が高くなければ、模倣した競争相手がどこかのタイミングで出現します。後発の競争相手のビジネスモデルは模倣の対象となったビジネスモデルよりもブラッシュアップされていることも多くあり、脅威となります。

②加盟店から提供するサービス品質のバラツキ

競合がなく、市場において需要過多のうちは店舗サービスレベルは取り立てて問題とはなりにくいでしょう。なぜならば比較対象が自社ブランド以外にはないからです。ところが、ビジネスモデルが市場に認知され模倣者が発生すると比較対象が生まれ、供給過多になりユーザー側が選べる立場となります。さらに、市場が成熟してくることは店舗数がかなり増えていることが想定されます。店舗数の増加は市場の認知のために必要はありますが、フランチャイズ加盟店は独立した店舗であるため品質にバラツキが発生してくることがあります。バラツキが発生するとサービスレベルが低い店舗は顧客に選択されないため経営が困難となり、さらに本部からの統制も効きにくくなります。こういった状態を改善するため、しばしばフランチャイズ本部が経営が傾いた店舗を立て直すために直営店化することもあります。

③後継者問題をはじめとした「ヒト」の問題

安定期から成熟期にさしかかると、サービスレベル以外の問題が出てきます。第一には、スタッフの確保です。同様の店舗が増えれば働くスタッフもお店を選ぶようになりますし、スタッフが確保できなければ事業の持続が困難となります。またオーナーの高齢化に伴って事業意欲が衰えたり後継者がいなかったり、などの理由から本部がフランチャイズ店舗を買い取り直営店化してくこともあります。

フランチャイズは他人資本の活用ですので、本部に資金が乏しくても成長期に多店舗展開を実現することができます。多店舗展開が実現できれば、加盟金やロイヤリティが入ってきますので資金は貯まっていきます。その資金を活用し、下図のように直営店を中心とした新たな展開をすることでサービス品質を高めつつ、統制を強め、新たな成長基調に乗せていく展開を考えることもできるでしょう。

フランチャイズの直営化によるサービス品質の安定

フランチャイズイノベーション

フランチャイズモデルでの永続的な成長

フランチャイズでの成長に陰りが見えてきたとき、直営化を進めていくことは一つの有効な手段ではあります。ではフランチャイズで永続的な成長は望めないのでしょうか。決してそうではありません。たとえば、以下の2点が満たされていれば可能になるでしょう。

①模倣が困難である
②理念の共有が高レベルでなされている

①模倣が困難である

模倣が困難であるのというは、商材がそのチェーンの一員でなければ手に入らなかったり、ビジネスモデルが成り立たない場合を指します。セブンイレブンを例に考えてみると、チェーンに入っていなければ魅力的なプライベートブランドである「セブンプレミアム」を仕入れ、販売することができません。また、受発注を管理するシステムも利用できませんし何より昨今のコンビニの進化を支える物流システムである多頻度多品種少量の共同配送も利用できません。

②理念の共有が高レベルでなされている

理念の共有は、加盟店やスタッフがチェーンの一員であることに誇りを持っている状態です。本部が掲げる理念からブレずにチェーン運営を行い、加盟店と本部が同じ目的を持つことで本部に対する誇りが生まれます。ここで難しいのは、加盟者数を伸ばすフランチャイズチェーンにはカリスマ経営者が存在することが多く、このカリスマに対する傾倒がチェーンに対する忠誠心になっている場合です。そういった意味でもカリスマへの忠誠の対象を理念という形がないものに変えていくプロセスがフランチャイズとして永続してく本部には求められていくのでしょう。

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日本を変えたFCチェーン「フランチャイズ・イノベーション」

■大手FCチェーンを独自分析
(CoCo壱番屋、QBハウス、セブン-イレブン、ハードオフ、明光義塾、モスバーガー)
■明光義塾 渡邉塾長インタビュー掲載
FCチェーンの中には、社会にイノベーションをもたらしたものも少なからず存在します。新しい市場を切り拓いたチェーン、日本の商習慣や生活習慣を変えたチェーンもあります。本書では、日本を変えた代表的なフランチャイズチェーン6社を取り上げ、フランチャイズの特徴を明らかにしました。また、どういう時期にFC展開が進み、どういう時期に直営化が進むのか、成長過程のなかでFCビジネスを考察しました。イノベーションの実現に、フランチャイズという仕組みは大きく貢献します。本書でフランチャイズの理解を深め、イノベーション実現にご活用ください。

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