FC研では、平成29年2月に「エリアフランチャイズ 日本唯一のエリアフランチャイズ導入の手引書」を執筆しました。これは、日本で初めてのエリアフランチャイズ制度導入の指南書となっています。
本書籍の発刊にあたり、平成23年3月に調査・執筆した「エリア・フランチャイズ制度に関する調査報告書 ~本邦初!エリア・フランチャイズ制の調査・解説~」の情報をコラムとして抜粋掲載することにしました。十分な情報が公表されていない「エリアフランチャイズ制度」について広く情報発信することで、フランチャイズ業界の発展に寄与したいと考えてのことです。
ただし、本コラムはH23年3月の調査報告書を、そのまま抜粋したものであり最新の情報ではない点はご了承ください。
今回は「エリア・フランチャイズ制により本当に店舗展開のスピードは上がったか」を掲載します。
エリア・フランチャイズ制により本当に店舗展開のスピードは上がったか
ニッセイ基礎研究所・経済調査レポート(2007-05)小本恵照氏の「マルチユニット・フランチャイジーの成長と課題」という論文から、適宜引用してエリア・フランチャイズ導入の効果測定を行ってみます。
まず、エリア・フランチャイジーの店舗数動向を調べてみます。
コンビニ業界では、1980 年代から中堅チェーンが大手チェーンを追い上げる目的でエリア・フランチャイズが利用されてきた。
エリアフランチャイジーの経営状況は店舗数の変動によって測定することができる。2000年度から2006年度までの店舗数が把握できるエリアフランチャイジーについて店舗数の変化率を見たものが、下記図表である。店舗の増減率は2000~2006年度および2003~2006年度の2期間について計算した。
エリアフランチャイジーの店舗数の増減状況
2000~2006 年度については、一部のチェーンを除き高い伸び率を示している。セブン-イレブンおよびローソンの伸びを上回っているチェーンが半数以上を示している。2003~2006年度については、伸びが低下するチェーンが増加し、セブン-イレブンおよびローソンの伸びを下回るチェーンも増加している。コンビニ業界が成熟化する中で、エリアフランチャイジーの経営環境が厳しさを増していることを示している。特に、設立から年数が経過している企業で成長の鈍化や衰退が見られる。
次に、フランチャイザーにとってのエリア・フランチャイズ制の効果を調べてみます。
同じく小本氏の論文から引用致します。
フランチャイザーによってエリアフランチャイズは、出店のスピードアップを図るという理由があった。この目的が達成されたかどうかを、エリアフランチャイズを利用しているチェーンと利用していないチェーンを比較することによって確認した。比較の期間は、本格的にエリアフランチャイズの利用が始まった 1987 年度から 2006 年度までとした。
フランチャイザーの店舗数の変化
これによると、最も積極的にエリアフランチャイズを展開したサンクスの店舗の増加率は他のチェーンに比べて高い。エリアフランチャイズの利用による高成長の実現という目標はほぼ達成されていると考えられる。しかし、問題がないわけではない。2006年の栄興サンクスの北海道からの撤退、足元における埼玉や四国における店舗数の減少など、近年では業績不振のエリアフランチャイズが散見される。
これは、エリアフランチャイズの導入によって急速な事業拡大は比較的容易に実現できるものの、エリアフランチャイジーの経営を長期間にわたって健全なものに保つためには、かなりの努力を必要とすることを意味していると考えられる。
エリアフランチャイズを利用して成長を実現するためには、フランチャイザーは、自分自身の能力を見極め、エリアフランチャイズのメリットとデメリットを十分認識した上でその活用を図ることが重要だと考えられる。