FCチェーンにおけるスーパーバイザーの役割 ~レポート「飲食店FC本部におけるスーパーバイザー制度構築の手順」より~
フランチャイズ研究会では、毎年研究会メンバーによるテーマ別分科会活動を実施しています。2022年度は、「SVの在り方」分科会をその一つとして発足させ、1年間の活動を行いました。
2023年4月に、分科会活動の成果物となるレポート「飲食店FC本部におけるスーパーバイザー制度構築の手順(入門編)」を制作し公開しました。
本コラムは、当レポートより「スーパーバイザーの役割」について解説します。
コンテンツ
スーパーバイザー(SV)とは
FC本部と加盟店が締結するフランチャイズ契約では、多くの場合、本部は加盟者が支払う加盟金やロイヤリティの見返りとして、ビジネスに必要なノウハウや経営システムである「フランチャイズパッケージ(FCパッケージ)」を提供します。その内容は、商標・チェーン名・サービスマークを使用する権利、店舗の運営や利益追求のために行う指導や援助を受ける権利などがあります。
スーパーバイザー(SV)は、FCパッケージの一部を構成し、加盟店の経営指導を行う本部指導員のことを指します。チェーンによってはフィールドカウンセラー、ストアアドバイサーなどと呼ばれており、本部と加盟店の重要なパイプ役となります。本部が持つ「経営理念」「ビジョン」「経営戦略」「マーケティング戦略」が加盟店に正しく理解され、店舗運営が実践されているかをチェックし、継続的に指導・支援していく役割を担っています。
SVは店舗を巡回し、本部のブランド指針に沿った正しいサービスが提供されているかの管理、売上アップのための本部ノウハウの指導、部下のマネジメントや教育に対する指導、また店舗内で問題があれば、加盟店オーナーと改善に向けて話し合います。
スーパーバイザーの6つの機能
スーパーバイザー(SV)は、加盟店の支援を通じて、オーナーとのコミュニケーション、店舗業績の向上や業績不振時のサポートを行い、本部指導に基づく運営がされているかチェックを行います。SVは、加盟店へのスーパーバイジングを通じて以下のような6つの機能を果たすことが求められています。
カウンセリング(コンサルテーションの潤滑油)
加盟店がコンサルテーションに基づいた行動を取れるよう関係を円滑にする機能
コントロール(統制機能)
フランチャイズ契約に基づいた、標準的な運営や加盟店のあるべき姿を実現するために、統制を行う機能
コミュニケーション(情報伝達機能)
本部と加盟店の間に立って、お互いのやり取りによる情報、意見、気持ちの交流を通じて、加盟店との信頼関係を強めていく機能
コンサルテーション(経営診断機能)
仮説~検証のプロセスを通じて、加盟店の業績向上に向けた施策の最適解を導き出し、支援する機能
プロモーション(販売促進機能)
チェーン全体の販売促進の実施や加盟店ごとの個別販促の実施をサポートする機能
コーディネーション(本部各部署との調整機能)
加盟店が業績を向上させるために本部の各部署と密接に連携し、最適な加盟店支援につなげる機能
出典:フランチャイズ研究会「新版 フランチャイズ本部構築ガイドブック」)
専任SVがいる本部といない本部の違い
(1)本部の視点による専任SVの必要性
フランチャイズチェーンの店舗数が拡大すると、全体への情報提供や運営指導のみでは、加盟店一軒一軒の動きを見て本部がアドバイスをすることは難しくなります。加盟店が標準的な運営をしているかどうか、チェーン全体の販促キャンペーンを実行しているかどうかをチェックする機能が弱くなると、加盟店が提供するサービスの品質が乱れ、顧客クレームが発生しやすくなりチェーン全体のイメージ低下につながることもあります。
また、加盟店の課題発見と改善施策の実行を加盟店任せにすると、改善が遅れ加盟店の売上にも大きな影響を及ぼします。SVがいくつかの加盟店を専任として巡回して運営のチェックをおこなうことで、店舗の課題解決を円滑化することができます。
(2)加盟店の視点による専任SVの必要性
加盟店オーナーは、加盟した飲食業態について精通しているとは限りません。開店前に本部の研修等で店舗運営に関する知識を身につけることになりますが、それでも経験が充分というケースは少なく、さまざまな指導を本部に求めています。
そういう状況にありながら、本部における自店舗の担当者が決まっていない場合は、商品やオペレーション、人材育成、販売キャンペーンについて疑問点等をぶつけようとしても、本部の組織の中で誰に連絡してよいのかわからなく困ることがあります。
専任担当SVの存在は、孤独になりがちな加盟店オーナーが困ったときの相談窓口として、大変に力強く感じられるでしょう。さらに、加盟店オーナーとの関係を構築し、不満などを小さいうちに聞き出して、本部に報告するのもSVの重要な役割といえます。
専任SVの設置による情報管理の円滑化
以上のように、SVは、本部と加盟店をつなぐ役割を果たします。アーリーステージの飲食業FC本部においては、調理技術を持つオーナーや店長がSVを兼任している本部も見られますが、飲食業は調理のほかにも店舗の宣伝や接客など多様な技術ノウハウが必要で、本部から様々な情報を発信し店舗管理を行う必要があります。FCパッケージの品質を維持向上させるため、本部は店舗の拡大とともにSVの機能を充実させていく必要があるといえるでしょう。
専任SVのいない本部は、加盟店に提供した各種の情報や運営指導について、実際に加盟店が実行しているかどうかのチェックがおろそかになりがちです。また、加盟店からの相談や要望についても、本部内のそれぞれの担当者が対応することになるため、全体を集約したりバランスを図ったりする本部内での調整に時間がかかってしまいます。
SVを専任として配置してSVの機能を向上させることで、加盟店の品質管理が行き渡り、情報の集約が容易となります。本部・SV・加盟店の三者がより太い情報交流のチャンネルを持つことで、本部と加盟店の売上拡大を導くことができます。
レポート「飲食店FC本部におけるスーパーバイザー制度構築の手順(入門編)」では、上記のほかにも、飲食業フランチャイズチェーン(FC)におけるスーパーバイザーの役割と仕事内容を整理し、FC本部におけるスーパーバイザー制度を確立していくうえでの基本ポイントと手順をまとめています。
全文は以下よりのリンク先よりご購入いただけます。ぜひご覧ください。