フランチャイズ展開か直営か

どのような場合にフランチャイズ展開し、どのような場合に直営化するのか

新たなビジネスモデルを立ち上げるときにどのようなときにフランチャイズを利用して、どのようなときに利用しなくなるのでしょうか?
本来、フランチャイズをビジネスモデルの一手法として考えると、フランチャイズ展開によるメリットを取れるときはフランチャイズにより事業を拡大し、経営環境が変化し、フランチャイズ展開しているデメリットがメリットを上回るようになった場合に直営化を進めるのではないでしょうか。

 

参考コラム:

フランチャイズ展開する場合

ビジネスモデルを立ち上げるという観点からフランチャイズの意味合いを仕組み、提供価値、顧客体験の区分で考えてみると

  1. 他人資本(他人の経営資源を含む)を利用する。(仕組み)
  2. 新しい商品、サービスを流行らせ、認知効果を高める。(提供価値、顧客体験)
  3. スケールメリットをとることで経営資源の効率活用を図る(仕組み、顧客体験)

ということになります。
特に、提供価値の新奇性が強いほど、2.の「流行らせる」ことが重要になります。
フランチャイズ本部が収益をどのように得るかという経営視点で考えたときには、

4. フランチャイジーから受け取るロイヤルティや原料・商材の販売収益という経済的メリット

も加えて考えなければなりません。

直営化する場合

一方、フランチャイズから直営に戻す動きが現れるのは、

  1. 自社の信用性、資本力向上などにより他人資本(他人の経営資源を含む)を利用する必要性が以前より少ない(仕組み)
  2. 競争環境や社会環境の変化により、これまでの商品、サービス内容を大幅に変革する必要がある。(提供価値、顧客体験)
  3. スケールメリットがスケールゆえの別の不効率により相殺されている。
  4. 各店の収益性の低下によりロイヤルティ収益や原料・商材の販売収益よりも赤字店対策費が上回っている。

ときではないでしょうか。
以下で、実際の事例をもとにこれらを検証してみます。

他人資本(経営資源を含む)を利用する

a.人的資源の利用

QBハウスは、資格を持った働き手を得るという点で他人の経営資源を利用する必要がありました。CoCo壱番屋は、独立志向を持つ人材を集め、ブルームシステムでフランチャイズ店の店長兼オーナーとして育成したのは、店舗を経営者としての自覚を持って運営できる人材が必要だったからでしょう。

ハードオフでは、修理ノウハウを持つ、家電販売出身の人材が必要でした。家電量販店により経営が圧迫された中小家電が多くあったことも、人材の供給源になりました。

明光義塾が脱サラ教育未経験者を中心に人材を集め、成功したオーナー教室長に複数教室を持ってもらいフランチャイズ展開したのは、地域密着の学習塾にとって、地域の生徒や保護者、講師との関係作りなどのマネジメントができる人材が必要でした。

コンビニエンスストアが酒販店、たばこ店などからも業態転換を進めた事例は、酒販免許、小売販売業許可の資格を持った店舗を利用する意味もあると思います。経営者として、マネジメントもして、家族労働を含め労働力の供給という他人の経営資源を利用するモデルがコンビニエンスストアのフランチャイズチェーンではないでしょうか。

働き手として考えたときに、経営者でもあり、自ら店舗運営のためのオペレーションも学び働き手にもなるフランチャイズ店オーナーは、通常のサラリーマン感覚で働く労働力と比較した場合、モラールや責任感の面でも大きな差があると思います。ここに、フランチャイズ化の大きなメリットがあることは、計数化はできませんがフランチャイズモデルの大きな成功要因です。

一方で、そうした働き手もいずれは高齢化していきます。その時、後継者も同じ感覚でそのフランチャイズ店を引き継ぐでしょうか。ここに、独立志向の人材を集めることの時間の変化によるメリットが薄れていく側面があります。人的資源利用のためのフランチャイズ化は、フランチャイズ展開による働き手に一定の寿命があるということと後継者難のリスクがあるという将来のデメリットを内包しています。

北海道で大手コンビニチェーンを押さえて圧倒的にトップを維持しているセイコーマートは、もともと酒類卸の丸ヨ西尾を母体に、酒販店の生き残りのために業態転換として始まりました。酒販店をフランチャイズとして店舗網を広げたため、オーナーの高齢化と後継者不足問題に直面して、店舗のリニューアルのための再投資もできない状態でした。そのため、地域に根ざした店舗を閉店すれば地域住民に迷惑がかかるという判断で直営化への切り替えが進みました。自社で再投資するたけの資本力を本部がすでに蓄えたからでもあります。

b.出店立地、既存店舗の利用

コンビニエンスストアが従来の徒歩圏内の商圏に店舗を有し大規模店舗の台頭により存亡の危機にたたされていた中小小売店を受け皿に出店した点が事例として挙げられます。

QBハウスも、やはり理容業に向いた立地を得るために、人が集まる場所を持つということと、資格を持った働き手を得るという点で他人の経営資源を利用する必要がありました。

ハードオフでは、中古品の仕入ができる地域に出店することが必要です。そうした地域に店舗により、消費者から商品を仕入れ、その地域の消費者に販売しているからです。

出店地確保のためのフランチャイズ展開は、競争環境や地域の交通事情の変化により状況が変化します。
飲食業の場合、油により傷みが激しいこと、飽きが来ることなどから一定時期が来たら店舗の改装投資が必要です。フランチャイズ中心で展開していると、老朽化した店舗を改装できず、店舗イメージが下がるリスクがあります。
立地メリットをとるためのフランチャイズ化は、交通環境の変化による立地環境の変化や、店舗の改装資金調達という問題について、フランチャイズ展開したのちに考えなければなりません。

c.資本再投資のための直営化

フランチャイズチェーンを作る段階では、自ら人材募集し、立地を確保するだけの資本力がないため、他人の資本(貯蓄)の蓄積や信用力による調達(加盟者による借入調達)により展開することになるでしょう。しかしチェーン本部の上場や、信用度が上がって資金調達力が上がってくると、資金という点ではフランチャイズを利用するメリットは薄れます。

ケーズデンキは、家電販売の大型化競争に対応するため直営化を進めました。ケーズデンキのフランチャイズ契約先の店舗の売り場面積は1000平方メートル未満の小規模の店舗が多く、ヤマダ電機など競合他社に対抗するためには、大型化をすすめる必要がありましたが、フランチャイズ各社では追加投資のための資金調達が難しい状態でした。このため経営統合という形で数店舗持つフランチャイズ店を直営化していき、店舗改装、大型化を進める競争力を得て、対抗していきました。

一方、セブンイレブンのCタイプによるフランチャイズ展開では、本部の資本力で店舗に向いた立地を確保しています。しかし、人的リソースについては、フランチャイズオーナーとして脱サラ組を中心に集めるという戦略をとっています。人的リソースがコンビニという業態にとって有効な成功要因であると考えているからでしょう。

こうした、チェーン全体のブランドを守るためにあえて資本を投下していくのが本来のフランチャイズ本部の責務だと思います。
そう考えると、直営比率が高かったマクドナルドが、前CEO時代に店長に店舗を売却してフランチャイズ化を進めていった戦略には疑問を持たざるを得ません。高額な店舗取得費や、長い契約期間、店舗が不採算になった場合に既存の加盟者の中からしか譲渡先を見つければいけない点など、加盟者の負担は大きいと考えられます。この戦略は、チェーン全体で見た場合、プラスには機能しなかったのは、その後の経過から明らかとなりました。

新しい商品・サービスをはやらせ、認知効果を高める

a.新しいサービスを認知させる

セブンイレブンが開業した当初、コンビニエンスストアという業態を皆理解していませんでした。しかし、地域を集中して出店したことで認知効果も高まったと言えます。全ての商品、サービスに言えることですが、流行っていることが、さらに流行らせる効果があります。

ハードオフは、保証制度により安心を提供することで、リユースというサービスを作り上げ、リサイクルショップの概念を破壊しました。中古という概念は書籍では一般的でした。ハードオフがチェーンとして展開したことでリユースというサービスは消費者の認知を受けたと言えるでしょう。

b.認知を高め、既存業界へ対抗する

QBハウスは、創業時からフランチャイズ化を前提に新しいサービスを普及させました。新しいサービスや商品を提供しようとするためには、複数の事業体が同時にサービス提供していくことで既存業界団体からの圧力に対抗していこうという意図だと思います。

新しい商品を認知させるためにフランチャイズ展開を利用した事例としてはじめてのものは、小僧寿しチェーンでないでしょうか。かつて、お寿司といえばお寿司屋さんで食べるか、晴れのお祝いやお客さんが来た時にお寿司屋さんから出前をとって食べるのが定番でした。いまでは、寿司の宅配チェーンもありますし、スーパーでお寿司を買って、家で食べることもよくあります。小僧寿しチェーンができた時代には、お寿司を買って家で普通の食事として食べるということは画期的なライフスタイルの転換だったと思います。こうした画期的なサービスモデルを流行らせるためには、フランチャイズによりチェーンを作るという方法が有効だったでしょう。

小僧寿しチェーンも、QBハウスと同様フランチャイズ店のみで拡大していきました。特徴的なのは、積極的にフランチャイズ加盟者を募集するのではなく、むしろ、加盟希望者の中から厳選して、飲食業界の未経験者で、共同運営する姿勢を大事にし、個人よりも法人化して多店舗展開できる加盟者を選択していきました。材料の調達の自由を認め、ロイヤリティの使途決定やプロモーション、商品開発、教育指導に加盟者を参画させるなど、本部と加盟者が一体となってチェーンを運営していました。フランチャイズの運営としては精神性で結ばれ共同経営的な形だったのかもしれません。
しかし、持ち帰り寿司が消費者に定着してくると、スーパーが同様に持ち帰り寿司を販売するようになり、新奇性が薄れてしまい、また、回転寿司チェーンの台頭で安価な寿司がお店で食べられるようになると毎期赤字決算を繰りかえし、今ではフランチャイズ店が減少し半分は直営店になっています。

c.サービスのリニューアルのための直営化

フランチャイズのみの運営は、事業環境の変化へ対応が遅れるリスクがあります。商品やサービスのモデルチェンジを進める時期には、一旦、直営化した方が大胆な改革が推し進められる場合もあります。

吉野家は、2003年40%だったフランチャイズ比率が2015年現在10%まで下がりました。牛丼単品のメニューを鍋やカレーに広げることで店舗運営コストが上昇するような取り組みは、フランチャイズの協力を取り付けるのは難しいでしょう。直営化によりこうした変化対応が迅速に行うことができます。今後、高齢者でも無理なく扱える煮込み鍋やキッチン、カウンターなどを改装した実験店をオープンする予定です。こうした実験的な取り組みも直営比率が高ければ、導入までの調整も短期間でしょう。このように今までの商品構成の大胆な見直しが必要になった段階のフランチャイズ本部がとる戦略としてフランチャイズ直営化をとらえることができます。

ピーシーデポは、PC DEPOTパソコンクリニックを直営化し、PC DEPOT店舗内や、ケーズデンキ店舗内に出店しています。こうした店舗では、PC やスマートフォンを購入したユーザーが一定の月額使用料で、買い替えた時に付随的な作業をPC DEPOTパソコンクリニックで対応し、持ち帰って無線のルーターで、インターネットがすぐに使えるようになるようなサービスや、iPadで週刊誌などを定期購読できるオリジナルセットなどを提供しています。技術の進歩が速く、商品もめまぐるしく変わっていくPC やスマートフォン、インターネットに関しては、最新の専門知識を持った人材を確保し、トレーニングしておく必要があります。こうした人材を安定して供給していくためには、フランチャイズよりも直営化して確保、教育した方が効率的です。このため、2010 年よりパソコンクリニックについては直営化を進めているのです。2015年3月期では、商品売上合計 301 億円に対してサービス売上は211 億円となり、商品売上の減少(前年比83.7%)をサービス売上の増加(同 118.7%)で補っていることを見ると、こうしたサービス転換に直営化によりいち早く対応したことが効を奏していると言えるでしょう。

QBハウスでも、最近では未経験者を採用し研修で一人前にしていくビジネスモデルに変化しつつあるように見えます。これは、かつての競合との差別化要因であったシステム投資、ハードの部分での差別化が、インターネット環境の劇的な変化とシステムコスト低廉化により難しくなってきているからです。QBハウスのサービス内容はカットのみと至ってシンプルなので、この部分をまねれば競合がたくさんできてしまいます。差別化を図るには、サービスレベルで競合化を図るという機能の追求を全店でもれなく洗練されたレベルまで高まるしかないのではないでしょうか。マニュアルを渡して加盟店に教育してもらうだけではばらつきが出てしまいます。トレーナーを育成し、直営により研修体制で徹底を図る必要があるのでしょう。

セイコーマートは、店舗内で調理できるシステム「ホットシェフ」で、その場で調理することにより保存料を一切使わず他のコンビニのイートインとは差別化しています。こうした店内調理で味の安定感を出せているのは直営化により運営を標準化したことが大きな要因になっています。

こうしたサービスを全店に再徹底するためには、直営化による教育体系を整備することも時期もあるでしょう。

d.ブランド維持のために敢えて直営路線をとる

ブランドイメージを重視して差別化するために、あえて初めからフランチャイズ化せずに直営方式を貫いているのがスターバックスです。フランチャイズの場合、加盟店によって、サービスの質にばらつきが生まれること、回転率を上げて収益を高めようとして「ゆったりとしたくつろぎの空間で、極上のコーヒーを堪能する」というスターバックスのブランド戦略にそぐわなくなるリスクがあるからです。直営店では店長やスタッフを教育研修したり配置転換もできるため、方針を徹底しやすくなります。このため、あえてフランチャイズ路線を選択していません。

スケールメリットをとることで経営資源の効率活用を図る

a.システム投資の回収

QBハウスは、創業時からチェーン化を前提にシステムを組み、それによるコストダウンで模倣店と差別化するという意図を持っていましたから、スケールメリットによる効率性も利用していたと言えます。システム投資は、かつては競合に対する大きなコスト差別化要因でした。近年、インターネット環境やシステムコストの低廉によりシステム投資による差別化の意味合いは減ってきています。

CoCo壱番屋のカレーのルーを工場で作ることによりスケールメリットを追求しています。

店舗以外の場所でのセントラルキッチンは味の均一化や店舗の衛生面や運営コスト面でもメリットがあります。味や風味の再現性が、その場での調理に遜色がないレベルであれば効果は維持できるでしょう。

b.仕入、物流システムのメリット

セブンイレブンは、フランチャイズ店舗と配送センター、製造工場を一体としてとらえました。

フランチャイズも、ベンダーの集約や共同配送も、事業体としては別会社です。これらを束ねて一つのサプライチェーンとして機能させました。加えて、地域ドミナント出店をとることで、サプライチェーンの効率性をその地域内で高めることに成功しました。こうした異なる経営体を束ねる発想は、出版社と書店と一つのサプライチェーンに束ねた出版取次業にも似たものです。鈴木敏文氏の出身であることも関係があるもしれません。POSシステムにより売れ筋商品を多頻度小ロットで配送することで売れ残りリスクを回避した点が、返品ロスを抱える出版業とは大きく異なります。

このシステムを各地域で作り上げて、コストメリットをとることがフランチャイズ化のメリットでもありました。

c.PBブランドのメリット

コンビニチェーンのプライベートブランド(PBブランド)による商材供給は、大規模展開することでコストメリットを追求することができます。本部側もロイヤリティとは別に商材利益を載せることもできます。競争環境が激化したときに、競合との差別化を図るため、本部のPOSデータの分析とメーカーとの関係を利用した開発力により、競合との差別化要素を維持し続けることができます。

こうした戦略は各フランチャイズ本部が同様にとっていますが、仕入、物流のメリット、PBブランドの開発、商品生産のメーカー利益全て享受するチェーンもあります。

セイコーマートは高い直営比率により、大胆なビジネスモデル開発を続けています。フランチャイズオーナーの高齢化対策から始めた直営化で、現在では、7割が直営店となっていること、北海道で4割近い店舗シェアを持つスケールメリット、もともと酒販卸からスタートしたため卸機能、物流機能を自社で持つこと、北海道という一種の経済圏でドミナントをとっていること、生産地、工場、物流、店舗と川上から川下まで自社グループを持っていることなどの優位性があります。

同社はプライベートブランドを自社工場で生産し積極的に展開しています。各店舗の需要把握という点では、業界に先駆けて2000年にクラブカードも始め、今では400万人の会員を持っています。人口550万人の北海道での占有度を考えると非常に高いものでしょう。カード情報も本人の承諾の下に住所、年齢、性別なども登録してもらっており、ある店舗にどの地域からお客さんが来ているかを分析して、重点的にチラシを巻いたり、リピーター向けに売上が少ない商品もきちんと揃えておくなどのきめ細かいサービス提供をしたりすることが、フランチャイズオーナーの経営感覚に依存しなくても、本部がデータで把握ができるというのが、フランチャイズオーナー依存の他のコンビニチェーンとの圧倒的差別化要素でしょう。PB商品を自社工場で生産し、生産地、自社工場、店舗を結ぶ物流も空トラックがでないように道内各地の物流拠点を結び物流コストを抑え、自社サプライチェーンのメリットを最大限得ています。こうした投資が実現できたのも早くに直営化して投資回収効果を高めたからと言えるでしょう。

ロイヤルティや商材・原材料販売収益を得る

a.ロイヤルティを得る

本来のフランチャイズモデルといえるでしょう。商材や原材料を本部が供給しない、あるいは、供給もするがどこから仕入れるかはフランチャイズの判断に委ねるような場合には、フランチャイズ各店舗からのロイヤルティ収入を本部の収入とせざるを得ません。そのためフランチャイズ各店が安定的に収益を上げることを第一命題として経営していくことになるからです。

ロイヤルティを得るという観点に着目すれば、損益分岐点維持のために直営化するという選択肢があることが分かります。

業績不振によりロイヤルティを支払えるだけの収益が支払えなくなった場合でも、ロイヤルティなしであれば店舗は残すことができる程度の収益が見込める商圏であるならば、直営化して店舗を残し、チェーンのブランドを維持することができます。

b.商材・原材料販売収益を得る

CoCo壱番屋は、創業以来、ハウス食品からカレースパイスを調達してきました。CoCo壱番屋側にも安定調達や工場における生産技術向上というメリットがあったと思いますが、ハウス食品が平成10年に出資した背景には、川上のメーカーによる川下のチェーン店舗が全国規模で展開することで、販売先を確保しメーカー利益を得るというメリットがあったのだと思います。今回、ハウス食品グループ本社の子会社となることで、食材調達力、メニュー開発、販促、海外展開においてCoCo壱番屋が先兵となるという戦略が、より明確になりました。

どさん子チェーンは、本格的なラーメンフランチャイズでした。札幌ラーメンを全国区にしたチェーンと言えるでしょう。それまでのラーメンは中華そばそのもので、具材はナルト、シナチク、スープはあっさりした中華スープでした。そこへ具材に野菜の大盛りが載り、スープは味噌でこってりしているラーメンの登場は衝撃を持って迎えられました。単価はそれまでの価格帯よりも割高でしたが、ラーメンで十分おなか一杯になる満足感でした。ロイヤリティをとらないかわりに、本部から供給した食材を使うことが条件でした。独自に開発したスープと調味料を差別化要素としていました。いわば、卸による利益を得るというメーカー的発想です。スープと調味料が差別化のポイントでしたが、ここがポイントであることが皆に知られるようになると、独自の味を開発して離脱し、独自のチェーンを作る加盟者も現れました。フランチャイズ本部が店舗からのフィードバックを得て新メニュー開発などを行うなどの仕組みも同時に持たないと単一メニュー、味で全フランチャイズの収益を維持し、束ね続けるのは難しいのではないでしょうか。

フランチャイズモデルを状況に応じて使い分ける

このように、考察してみると、フランチャイズのメリットをビジネスモデルの中に組み込んでフランチャイズ展開、理念浸透による経営、直営化をうまく使い分けていくのがベストであると言えます。

成長のテコとしてフランチャイズを利用する場合ですと、スケールメリットやドミナントでの面をとるためにフランチャイズ展開し、規模の拡大による資本力で川上、川下を押さえ、メーカー利益や物流利益も享受しつつ、フランチャイズオーナーの世代交代の時期にあわせて直営化を進め、更なる差別化商品、サービスの投入で他社との比較優位を図って、またフランチャイズを増やしていくというのがフランチャイズをビジネスモデルに組み込んだ成功ストーリーではないでしょうか。
拡大のテコとしてフランチャイズを利用する場合、地域につながりを持つ人材や独立心の強い経営者感覚を持った人材の獲得がビジネスモデル維持のための重要な要素であることが多くあります。この場合には、フランチャイズの仕組み自体がビジネスモデルの中に組み込まれていると考えるべきです。

いずれの場合も、経営環境がどのように変化しているのか、どこまで加盟者に理念を共有できているのかを見極めながらフランチャイズ展開の舵取りをしていくことが重要なのです。

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