フランチャイズ・チェーンに向く事業とは?6つの事例も紹介

一般的に次のような項目が優位な事業は、チェーン・オペレーションに向いているといえます。

  1. 十分な潜在市場規模が期待できる
  2. 店舗運営が標準化、単純化、専門化できる
  3. 集中管理(本部)機能の存在意義が大きい(費用低減・オペレーション効率化)
  4. スケール・メリットが発揮できる
  5. 安定的なサプライ・チェーンを保持できる

では、チェーン・オペレーションに向く事業のなかでもフランチャイズに向く事業とは、どのような事業でしょうか?
具体的な6つのフランチャイズ本部の事例も紹介します。

フランチャイズ・チェーンに向く事業

フランチャイズ・チェーンに向く事業に向く事業とは、次のような10項目が優位に立つ事業と考えられます。

①地域密着が求められる事業

加盟者が当該地域在住または出身であって、地域の特性、諸事情に詳しいことが多いため。

②小商圏型で各店舗規模も小さく、直営で管理するには煩雑な事業

小商圏型のほうが一般に地域密着しやすいため。
加盟者が多店舗展開をすれば、本部は主として加盟者との関係を管理すればよいので、小規模店舗が多数あっても管理はそれほど煩雑にはならないため。

③経営資源の一つである人的資源の重要性が高い事業

店舗オーナーその人が人的資源として重要であるし、その家族スタッフという強力な人的資源が活用できるため。
チェーン店であるので、業績向上のための努力としてMDで工夫する余地は少ないけれど、人的スキルのレベルアップによる余地は大きいため。

④店舗スタッフの研修・管理が各店舗でもやりやすい事業

本社雇用のパート・アルバイトより、加盟者と直接雇用関係にあるパート・アルバイトの方が、人間関係が密になりやすく、各店舗での管理・研修に注力できるため。

⑤提供したノウハウの模倣・盗用が難しく参入障壁が高い事業

提供したノウハウが簡単に模倣・盗用できるようでは、加盟者がそれを持ってチェーンを離脱し、独自事業として始める恐れがあるため。
また模倣が簡単にできるような参入障壁が低い事業では、すぐに他企業が参入し、競争が激しくなるため。

⑥収益性が高く、投資回収が比較的早くできる事業
⑦初期投資額が高くなく、開業しやすく投資回収も早い事業

事業の魅力度を高め、加盟希望者を早期に多く募るため。
意欲のある加盟者の多店舗展開を可能にするため。

⑧事業の魅力度が高い

社会貢献できる、市場の将来性に期待が持てる等の要因により事業の魅力度を高め、早期に多くの加盟希望者を募るため。

⑨斬新な新規市場である事業

どの企業も参入していない新規市場を発見したとき、他人資本の活用により早期に多店舗展開を進め、短い期間に高い市場占有率を確保し、後発企業に圧倒的な優位性を確立するため。

⑩潜在加盟者が多数いる

特に短期間に大量出店したいとき、予め潜在的な加盟者がいるとわかっていると、安心してフランチャイズ展開を進められるため。

事例に見るフランチャイズに向く事業

事例1|カレーハウスCoCo壱番屋

ココイチの大きな特徴は、加盟店として出店するには、同社で一定期間社員として勤務しなければならない、ということです。独立志向の高い人材を雇用し、直営店等で研修をして、いわゆる“のれんわけ”に近い方式で独立し、加盟店として店舗展開を進めてもらいます。社員経験のある加盟店ですので、独立した後でも、経営理念の共有が高いレベルで可能になります。
立地にもよりますが、一般に地域に密着の事業です。単一商品に特化しているため作業、設備ともに標準化が進み、比較的小規模な店舗ですし、開業資金は、社員である間に一定額の貯蓄をするので、一般の脱サラよりスムーズに独立開業できるといえます。
また飲食店の要となる味は、セントラルキッチンで加工・調理することで均質を保ちつつ、真似できない味で、ノウハウの模倣も簡単ではありません。

事例2|QBハウス

従来、理容業と言えばシャンプー、カット、パーマ等幾つかのサービスを提供するものですが、QBハウスでは、サービスをカットのみに限定し、時間は10分、価格は1,000円というように、いたってシンプルなビジネス・フォーマットを構築しました。
サービスがシンプルなら店舗も小規模でシンプルなため、投資額も比較的少額です。時間を10分と限っているので、顧客は多くて1時間に6回転するという回転率の高さです。料金は1,000円と低価格ですから、リピーターも付きやすいといえます。
早く、安く、近くにある、飲食店で言えばファーストフードのようなこの理容業は、まさに潜在需要を開拓し、フランチャイズを活用した店舗展開で、急速に成長しました。
理容業という特性上、スタッフには資格を保持した人材が必要ですが、QBハウスでは独立志向のある理容師・美容師を加盟者に迎え、大量出店を実現しました。独立志向の強い理容師・美容師は潜在加盟者です。

事例3|セブンイレブン

セブンイレブンに代表されるコンビニエンス・ストアは、まさにフランチャイズ・システムを活用し成長してきた代表的な業態といえます。
「便利」という観点から面積約100㎡の店舗内に、3000アイテム以上の多品種の品揃えを行い、長時間営業を行っています。販売状況はPOSシステムにより単品管理され、売れ筋商品の品揃え、適正在庫の管理等を行っています。
近隣の人々の生活の便利に資するコンビニは、地域密着の小商圏型の店舗で、深夜営業も多いため、家族労働力への依存度は高まります。
多品種少量の商品を効率的に取扱い収益を上げるには、本部の集中管理システムが必須です。本部のマーチャンダイジング力、仕入力、情報システム、物流システム等々が揃ってはじめて収益を上げられる事業になるのです。これらは高い参入障壁となっています。
コンビニでは酒・タバコの販売免許が大切と考えられました。酒ディスカウンターの出現で業績不振に陥りつつあった個人の酒販店が潜在加盟店として存在しました。

事例4|ハードオフ

以前の中古品販売では、商品の機能・品質等に不安があり、さらに商品の買取価格・販売価格も値付けの基準が曖昧で、ここにも不安の要素が存在しました。しかしハードオフに代表される新世代のリユースショップでは、チェーン化することで商品の買取・販売実績が増加し、多数ある店舗のそれらのデータが本部に蓄積されることで、買取価格・販売価格の値付けの根拠が明瞭になり、また品質保証もすることで顧客に安心感を与えています。
ハードオフは家電中心の品揃えです。家電量販店の出店拡大を背景に、全国にある個店の家電販売店が業績不振に陥り始めており、これら家電店を加盟店として組織することでチェーン網を拡大しました。家電店は潜在加盟者といえます。前身が家電販売店であるので加盟店は商品知識に富み、研修が比較的簡単になること、従来から地域密着営業をしていたことは大きな強みです。

事例5|明光義塾

学習塾は1教室に多数の生徒を揃え、1人の技量の高い講師が指導するという集団教育が一般的でした。しかし明光義塾では個別指導方式を導入し、成長を続けています。
学習塾は顧客である生徒が一定期間固定客化する地域密着型の事業です。また集団指導では商圏が大きくなりがちですが、個別指導では小商圏になります。また店舗である教室がいわゆる一等立地の必要はなく、その設備も比較的簡易で小投資での開業が可能です。
個別指導の導入により、指導の過程をある程度標準化することが可能となりました。講師に大学生等のアルバイトを活用できるようになり、チェーン化が進展したと思われます。
さらに明光義塾では、受講料の低価格化を行いました。以前の学習塾は、成績の良い限られた子供の通うものでしたが、少子化で、どんな子供でも少しでも良い教育を受けさせたいという需要に対応し、新しく大きな市場を開拓したといえます。

事例6|モスバーガー

米国から上陸したマクドナルドが商業地の一等立地で大商圏型だったのに対し、モスバーガーは小商圏型で地域密着型でした。またマクドナルドは開業資金が1億円ほどと高額だったのに対し、モスバーガーは3000万円程度と比較的低額でした。
ファーストフードなのに作り置きせず、注文を受けてから調理するという丁寧な対応には、人的スキルが重要でした。さらに、いわゆるハンバーガーというファーストフード・レストランでありながら“待ってでも美味しい食事がしたい”需要に応えたといえます。
外国の食品でしたが、日本人の味覚に合うハンバーガーにこだわりを持ち、現在でも優れた商品開発力を誇るため、模倣は困難といえます。
モスバーガーにおいては、カリスマ社長と呼ばれた創業者櫻田氏の存在が欠かせません。強い統率力で、社員、加盟店の教育・研修に努め、経営理念の浸透に注力しました。

フランチャイズ展開に向く事業をフランチャイズ・チェーンとして成功させるには

このように考えてくると、フランチャイズに向くか否かは、業種で決まるのではなく、それぞれの事業の持つ特性によると考えられます。例えば明光義塾は、大教室で多人数を教える集団指導方式で、優秀な限られた層の生徒が顧客であっては、フランチャイズ展開は難しかったと思われます。しかし、個別指導方式を導入したこと、成績中位層のボリュームゾーンをターゲットとしたこと等を要因に、フランチャイズ・チェーンとして成功しています。

このように、同じ業種であっても、そのオペレーション等を工夫することでフランチャイズ展開に向く事業にできることがわかります。
では、このようなフランチャイズ展開に向く事業をフランチャイズ・チェーンとして成功させるには何が重要でしょうか。

(1)経営理念の共有

まず大切なことは、本部がしっかりとした経営理念を持ち、それを加盟店と深く共有することです。加盟店あっての本部、本部あっての加盟店、両者はどちらが無くともフランチャイズとしては成り立たないのです。

しかし、困ったことに、両者の利益は相反する部分があります。それは加盟金、ロイヤリティ、また本部が商品を卸している場合はその卸価格等々です。これらを高くすれば本部は儲かり、安くすれば加盟店の利益が大きくなります。どちらの儲けが大きいかを気にすれば、両者は協力関係を維持できなくなります。

このような事態を避けるためにも、本部・加盟店双方が納得・共感できる経営理念を掲げ、本部・加盟店が一丸となって共存共栄していかれるような努力が大切です。

(2)ノウハウの継続的イノベーション

フランチャイズ展開に向く事業をフランチャイズ・チェーンとして開始したとして、いつまでも同じノウハウに頼っているわけにはいきません。フランチャイズ・チェーンでは、本部が戦略立案機能やチェーン運営機能を持ち、加盟店がその実行部隊として販売活動に専念します。ですから本部は環境変化に対応して戦略やオペレーションの革新をし続ける必要があります。これらのイノベーションを続けるからこそ、加盟店からロイヤリティを受け取ることができ、フランチャイズ・チェーンとして成功できるのです。

継続的なイノベーションにフランチャイズ本部の存在意義があります。

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