フランチャイズ研究会

日本におけるフランチャイズの課題と,フランチャイズ研究会のミッション

当会は平成元年4月から30余年に亘りフランチャイズ・ビジネスに関する様々な研究および社会活動を行ってまいりました。令和3年4月,山岡雄己を会長とした新体制により「日本のフランチャイズ・ビジネスの健全な発展に寄与する」ことをミッションとした研究団体として,その活動を促進してまいります。

我国のフランチャイズ・ビジネスの現状

我国にはフランチャイズ・ビジネスに関して体系的に規定したいわゆる「フランチャイズ法」といわれるものが無く,経済産業省令である「中小小売商業振興法」と公正取引委員会の「フランチャイズ・ガイドライン」(略称)が,法的判断の根拠となっています。これらは時代における社会的課題に合わせて過去に何度か改訂されており,直近ではいずれも2021年1月に改定案が公開されました。

今回の改定は,その背景にコンビニエンス・ストアの24時間営業問題があったように思います。平成に起こった2度の震災において,コンビニエンス・ストアが果たした社会インフラストラクチャとしての機能は評価されたものの,過剰な出店ペースや働き手の不足などから加盟者側の経営環境は徐々に悪化してきていたというのは疑念の余地がありません。

ところで公正取引員会の所管法令である独占禁止法とは,そもそも「独占により自由競争が阻害され価格が不当に高騰することによって消費者が不利益を被る」ことを防止するための法律です。しかしながら日本人には「判官びいき」の傾向があり,どうも「弱きを助け強きをくじく」ことに意味を見出しがちなため,一般的には独占禁止法とは弱者救済のための法律である誤認している向きがあるように思えます。

また独占禁止法において規制されている「優越的地位の濫用」については,優越的地位自体が否定されているわけではないことを理解する必要があります。現在,コンビニエンス・ストアの一般的なフランチャイズ加盟契約は,加盟者が設備造作の初期投資を負担しない業務委託型(フランチャイズ業界ではターンキー型という,つまり初期投資をしないで鍵だけ渡されてオペレーションを委託される契約)となっています。そのような初期投資負担,リスク負担の現状からしても,フランチャイズ本部は加盟者に対して優越的地位にあることは明らかです。ただ,どこまでのオペレーションの強制を「濫用」と見做すかが,独占禁止法上の論点であると言えるでしょう。

我国のフランチャイズ・ビジネスにおける課題

上で見てきたように我国でフランチャイズを論じる場合,コンビニエンス・ストアの存在があまりにも大きいと言わざるを得ません。前述したように,現状のコンビニエンス・ストアの多くは業務委託型フランチャイズであるため,本部と加盟者のパワーバランスには少なからず偏重があり,両者がフラットに対等な関係性を築くのは難しい状態にあるといえるでしょう。フランチャイズ・ガイドライン等の改定は,そのような関係性の是正といった主旨があるように思えます。しかしながら,本来フランチャイズ・ビジネスとは,加盟者側が資本を投下し本部側がノウハウを提供するという「機能分担」により成立するビジネスモデルであり,我国のコンビニエンス・ストアにおける「業務委託型フランチャイズ」の方がむしろイレギュラーと見做すこともできます。

またフランチャイズ業界の構造は,本来理念共同体であるべき本部と加盟者が利益相反を起こし機能不全に陥るという「産」業界の問題を,「官」である管轄省庁が看過できずに関連法規の改定で調整するというような,いわば「大岡裁き」に委ねるような形になっています。本来はここで,大所高所からあるいはアカデミックな見地から助言をするという第三者機関が存在してもよいのですが,残念ながら我国には「フランチャイズ経営」に関する系統だった学会のような組織はないというのが現状です。

当会のミッションと今後の活動

当会は平成元年4月に中小企業診断士を中心として,「日本のフランチャイズ・ビジネスの健全な発展に寄与する」ことをミッションとした研究団体として発足しました。それから弁護士や税理士などフランチャイズ・ビジネスに関わる他士業を加えて活動を拡大し,30余年に亘りフランチャイズ・ビジネスに関する様々な研究および社会活動を行ってまいりました。

しかしながら当会は,いまだ日本のフランチャイズ・ビジネス界における「学」術研究団体としては不十分であり,当会のミッションを完遂するには更なる研究および活動領域の開発と拡充が不可欠であると認識しています。したがって今後は,①大学院等の教育機関と連携したアカデミックな学術研究,②複数店フランチャイズ加盟企業(いわゆるメガジー)と経営戦略の検証を行うコンソーシアムの確立,③フランチャイズ本部企業の新規事業開発・事業再構築・組織再編等に係る事例の発掘および実践的支援手法の体系化,といった方向性で,活動を拡充していく所存です。今後とも,当会の活動にご理解ご支援の程,よろしくお願い申し上げます。

フランチャイズ研究会 会長
山岡雄己

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